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採用広報
[サイヨウコウホウ]

「採用広報」とは、目標とする採用人数を達成することと、自社が求める人材の獲得を目的に、Webサイトや動画・SNS、パンフレット、イベントなどを通じて求職者に自社の魅力をPRしていく広報活動を指します。

1. 採用広報とは

採用広報には、主に次のものがあります。

▼採用広報の種類

採用広報の種類 内容 訴求範囲
採用総合媒体 リクナビやマイナビなど、いわゆる採用ナビ。ここからエントリーされた「採用母集団」をベースに、採用活動を進めていく
各種イベント 合同セミナー(大規模) 就職情報会社やイベント会社が主催する、数千人以上が集まる大規模な合同セミナー
合同セミナー(小・中規模) 就職情報会社や大学が主催する、業界や業種が特定されているテーマ性のある合同セミナー
自社イベント 自社で運営する会社説明会など
採用HP 事業内容や社員などの紹介をする自社運営のWebサイト
SNS FacebookやTwitterなどに企業アカウントを開設し、採用に関する情報を発信する
採用パンフレット 求職者への会社案内をする採用専用のパンフレット
採用動画 Webサイトや説明会などで流す動画。会社や仕事内容の紹介など、5分前後のものが多い

採用広報の目的は、目標とする採用人数を達成することと、自社が求める人材の獲得です。そのため、次の二つを意識しなければなりません。

差別化

目的を果たすには、競合他社との差別化に成功する必要があります。企業理念や事業内容、組織風土、社会への貢献性といった多角的な情報発信により、企業の魅力を多くの求職者に訴求します。

ミスマッチの減少

入社後のミスマッチを防ぐ意味においても、採用広報が果たす役割は大きくなっています。実際の仕事内容や職場環境、どのような人が活躍しているかといったリアルな情報を提供することで、企業理解を深めることができます。信頼性の高い情報を発信することにより、入社後に「想像していた職場ではなかった」といったミスマッチが起こりにくくなる効果も期待できます。

採用広報の多様化が進む背景

採用広報を重要な戦略と捉えている企業が増え、趣向を凝らした企業PRを見る機会も多くなりました。独自性の高い採用戦略を掲げる企業も多く、採用広報はますます多角化しています。

この背景にあるのが、人材獲得における競争の激化です。厚生労働省の公表によると、2019年4月の有効求人倍率は1.63倍で、引き続き売り手市場となっています。求人広告を展開するだけでは人材を確保できない状態が続く中、求職者に「選ばれる会社」になるため、採用広報戦略の差別化が必要になっているわけです。

もう一つの理由は、これまで新卒一括採用を中心に展開していた企業においても、採用ターゲットが多様化していることです。グローバル化や事業の多角化を推進するにあたって、「即戦力」「スペシャリスト」「女性活用」などをキーワードとした多様な人材が求められるようになりました。

こうした現状から、採用広報は従来多く見られた単一のテーマではなく、「一般新卒者向け」「キャリア採用向け」「グローバル人材向け」など、ターゲットにあわせたさまざまな手法が展開されています。

採用広報とブランディング

売り手市場が続く現在、自社が求める人材の獲得は容易ではありません。さらに採用のミスマッチが起これば、早期離職率を高めてしまうことになります。これらの課題を解決するうえで重要になるのが、採用ブランディングです。

採用ブランディングとは、自社のイメージを浸透させるよう、戦略的にアプローチしていくことです。他社との差別化を図りながら、自社独自のポジションを獲得するのが目的です。例えば「××社は女性が働きやすい会社」というように、企業が意図するイメージを浸透させることで、採用市場における優位性を高めることができます。

採用ブランディングでは、ターゲットとなる人物像を意識した一貫性のある戦略が重要です。例えば、「プロフェッショナルとして先鋭的な事業を行う会社」という企業イメージを持たせるなら、採用広報のビジュアルやタイトルも、これを想起させるものにしなければなりません。ターゲットとなる人物像を明確にし、どのようなイメージを作るべきか、十分に検討する必要があります。

2. 採用広報における成功事例

採用広報の事例を3社紹介します。

キリンホールディングス株式会社

グループスローガンと同じ採用コンセプトを掲げ、企業のブランドイメージを定着

キリンホールディングスの採用コンセプトは、グループスローガンと同じ「よろこびがつなぐ世界へ」。「あなたが伝えたいよろこびは?」をキーワードに、「営業活動を通じてキリンファンを増やす」「お客様につながる設備」などの情報を提供し、採用コンセプトのイメージを具体化しています。また、社員インタビューなどのコンテンツの随所に、企業と消費者、生産者のつながりを意識した表現が盛り込まれ、企業ブランディングが図られています。

同社の採用広報で、もう一つのテーマとなっているのが「CSV(Creating Shared Value)経営」です。CSVとは、社会的な課題を自社の強みで解決し、企業の持続的な成長につなげる考え方。日本を代表する企業として、早くからCSVに取り組んできたキリン。「よろこび」「つながり」という採用コンセプトと、社会への貢献性を打ち出す経営戦略との一貫性を持った展開により、企業イメージの浸透・定着に成功しています。

株式会社BAKE

Webメディアの運営を通じて、企業理念への共感を獲得

お菓子の企画・製造・販売を行うBAKEでは、「お菓子を、進化させる。」という企業ミッションのもと、さまざまな進化系スイーツの企画・製造を手掛けています。同社では、自社で運営するWebメディアを通じて、採用広報を行っています。

採用広報の核となる部分の運用はプロに依頼。SNSなどで若者に人気があるフリーライターの塩谷舞氏を編集長に迎え、企業ミッションを投影させたコンテンツを提供しています。また、「食品の科学者はどんな研究しているの? 最新研究をわかりやすく紹介!」「優秀な人財が、大きな企業の中でもつぶされず、その人らしく輝くためには?」など、求職者が興味を持ちそうなテーマを設定して情報を発信しています。

採用広報においては、企業理念への共感を得ることが重要なポイントになります。ターゲット像に合わせた企画内容やタイトル付けなど、ファンを獲得するために必要なクリエイティブを専門家に依頼している点も成功ポイントの一つです。

株式会社iCARE

SNSでターゲットの興味・関心を引き、ミスマッチのない採用に成功

健康労務関連のクラウドサービス提供をメイン事業としているiCARE。若者層を意識した動画メディア「TikTok」をはじめ、「Twitter」や「Facebook」を採用広報の手段として活用し、費用を抑えながら採用に成功しています。

同社の課題は、知名度が低いため、採用メディア上で展開するだけでは情報が埋もれてしまう点にありました。知名度が低い企業や中小企業が注目するダイレクトリクルーティングやリファラル採用といった新しい採用手法が台頭する中、「マーケットイン」ではなく「マーケットアウトの観点で何かできないか?」と考えたことがきっかけで、TikTokの活用に踏み切りました。

採用広報戦略として掲げた目標は、まず「iCAREが採用を行っている」と知ってもらうこと。そのため、インパクトがあって面白い動画を制作するところからスタートしました。同時に、「ユニークで元気な人柄の社員が多い組織風土」をアピールすることで、この動画に賛同する人材であればミスマッチの少ない採用ができると考えました。

その結果、公開した4本の動画が5万回以上再生され、6名の採用にいたっています。また、この採用戦略が話題を呼んだことで、一般ユーザーへの企業認知度もアップし、企業ブランディングにも貢献する結果となりました。

3. 採用広報を始めるために

採用広報には費用・マンパワーが必要

採用広報には、費用はもちろん、内容に応じた人員確保が必要です。まずは、採用広報の計画を立てて、予算と必要な人員を整理しなければなりません。

一般的な採用広報の例として、目安となる費用を見てみましょう。

▼採用広報費用の例

採用総合媒体 リクナビ 120万円~(基本掲載量)
マイナビ 150万円~(基本掲載量)
各種イベント 合同セミナー(大規模) 50万円前後~
合同セミナー(小・中規模) 20万円前後~
自社セミナー(外部会場) 10万円~(会場費)
採用HP作成 150万円前後~
SNS 無料
採用パンフレット 200万円前後~(3,000部)
採用動画 100万円前後~

上記金額は、あくまでも目安となる基本料金です。希望要件によって前後することが考えられるため、事前に見積もりをとって予算を調整する必要があります。

採用広報の手段によっては、代理店とのやりとりが発生し、メディアに掲載する社員の手配が必要になります。また、予算管理や内容のチェックなど、付随するさまざまな業務があります。イベントを開催する場合には、規模に応じて複数の社員に協力を仰がなければならないこともあります。採用広報を検討する際は、予算と人員計画を十分に練って、最大限の効果を得られるよう検討することが大切です。

4. 採用広報×リアルコミュ二ケーションが成功の鍵を握る

採用広報は、自社が求める人材を獲得するうえで重要な戦略です。しかし、採用広報が果たす役割はあくまでも求職者への情報提供であり、採用活動の入口となる一つのプロセスにすぎません。就職活動をしている求職者にとって企業選択の最終ポイントになるのは、社員との対話や会社見学、インターンシップなど、リアルな体験に基づく情報です。

採用広報に成功して母集団形成ができ、ポジティブなイメージを浸透させることができても、「実際に会社へ訪問したが、社員の印象が悪かった」など、期待値と実際が異なっていれば採用にはつながりません。採用目標を達成するには、採用広報から入社までの一連の流れを総合的に考え、施策を進めていくことが大切です。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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