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採用計画
[サイヨウケイカク]

年間の採用活動について、目標人数やスケジュール、求める人物像などをまとめた計画のことを「採用計画」といいます。採用計画は、採用の成功を左右するだけではなく、自社の経営計画を達成する上でも重要です。的確な採用計画を作成するには、採用計画に含めるべき要素を調査し、盛り込む必要があります。採用計画が策定されることで、年単位での具体的な採用活動をスムーズに行えるようになり、目標とする採用者数の達成に注力できます。

採用計画とは

採用計画とは、年間の採用活動について、目標人数やスケジュール、求める人物像などをまとめた計画のことです。経営方針や事業計画をもとに作成されます。

採用活動では、経営計画を達成するために必要な人材戦略を明確にし、採用人数や求める人物像をあきらかにすることが重要です。採用計画は、自社の課題に沿った採用人員の設定や、市場のニーズに合わせた採用方針の決定、自社の求める人物の採用手法を策定するなど、採用活動のさまざまなシーンで活用されます。

採用計画に必要な要素

採用計画を立てるには、以下の要素が必要です。

  1. 採用の市場動向の分析
  2. 採用人数の調査(要員調査)
  3. 採用活動の振り返り
  4. 採用方針の決定
  5. 年間採用活動計画の作成
  6. 採用基準の設定

1. 採用の市場動向の分析

自社の採用戦略を構築するにあたり、市場分析を行います。国内の景気、求人倍率や学生・求職者の意向など、実態や基本情報を把握することが重要です。政府が発表している求人倍率調査や経団連の指針、人材系企業の学生アンケートなどが役立ちます。

2. 採用人数の調査(要員調査)

要員調査とは、自社に必要な採用人数を把握するための調査です。職場(部署)ごとの欠員、会社として必要な人数や人材という二つの観点から情報収集を行います。

3. 採用活動の振り返り

振り返る項目には、採用実績、採用活動のスケジュール、採用体制、採用経費などがあります。これらを振り返ることにより、自社の採用力を把握するとともに、次年度への改善点を見つけられます。

4. 採用方針の決定

採用方針とは、要員計画から具体的な採用活動計画につなげていくための「考え方」や「狙い」をまとめたものです。採用方針では、採用目標数を決定するとともに、採用ターゲット別の目標数や基本方針などを明確にします。

5. 年間採用活動計画の作成

採用計画で設定された採用目標人数を達成するためのアクションプランを、年間採用活動計画で決定します。年間採用活動計画では、採用方針をもとに、過去の振り返りを参考にし、具体的な活動に落とし込むことが求められます。

6. 採用基準の設定

採用基準は職種ごとに求める経験やスキルなどを設定するほか、経営理念や社風などを踏まえて決定する必要があります。抽象的な表現だけでは、採用基準として扱うのが難しいため、さまざまな角度で採用基準を言語化する必要があります。

新卒採用計画の例

新卒採用は、年間スケジュールで行う一括採用が一般的です。学生の動向と他社動向に注意し、自社の立ち位置を把握しながら採用計画を立てる必要があります。また、社会に出る前の学生は、事業・仕事をイメージできていないため、企業から積極的に情報提供をする必要があります。会社説明会だけではなく、パンフレットや採用動画、求人媒体といったさまざまなチャンネルを検討するとともに、インターンシップなどで早期に接触することも検討します。

採用目標人数
営業職 5名 中長期的観点から若手社員を育成し、将来の中堅層につなげる。
技術職 10名
採用方針
基本方針 大学との連携を強め、早期人材発掘につなげる。自社の強みの浸透に注力する。
ターゲット別戦略 営業職:求人媒体、SNSを活用した採用広報活動に重きを置く
技術職:インターンシップを通じた人材確保を行う
選考方法
会社説明会、適性検査、面接(インターンシップ参加者は別途選考経路あり)
求める人物像
営業職 大卒以上、主体性と挑戦心がある
技術職 大卒以上、理系、知的好奇心と自立心を持っている
採用スケジュール
3月~4月 採用スケジュールの確定、就活イベントへの参加
5月 会社説明会の実施
6月 面接~最終選考/夏のインターン企画
7月~9月 内定者フォロー/夏のインターン実施
11月 内定者懇親会の実施
翌1月 冬のインターン企画
翌2月 冬のインターン実施

中途採用計画の例

中途採用の場合、自社の要員計画と事業計画をもとに活動を展開します。欠員募集のため、突発的に募集が発生することもあります。また、募集職種によって採用動向が異なるため、市場把握が重要です。

採用目標人数
エンジニア職 2名 10月末まで:組織拡大による基盤強化
広報担当 1名 8月末まで:欠員補充
求める人物像
エンジニア職 フロントエンジニア。開発経験3年以上 歓迎要件:英語力、プロジェクトマネジメント力
広報担当 自社のマーケティングや広報に携わった経験 歓迎要件:SNSでのマーケティング経験、動画編集力
採用チャンネル
エンジニア職 転職エージェントA、求人媒体B エンジニア職の転職に強いエージェントと求人を使用
広報 リファラル採用、求人媒体C、転職エージェントC 業務委託でのスポット採用も合わせて検討する
選考方法
書類選考、適性検査、面接
採用スケジュール
3月~4月 要員調査、採用計画の作成
5月 求人媒体への出稿、転職エージェントへ連絡
6月 社内のリファラル採用強化、エンジニア向け説明会に参加
8月 広報採用(目標)
9月 エンジニア採用活動途中振り返り、改善点抽出
10月 エンジニア採用(目標)

採用計画の立案ポイント

市場・競合の把握

採用市場や競合の動きを把握することは、自社の強みを理解することにつながります。そのために必要な情報源を整理することが大切です。

たとえば、経団連が発表する新卒採用指針(就活ルール)は、就職活動の解禁日や選考の解禁日などの目安となるものです。就活ルール自体は、経団連は2021年卒を境に廃止を宣言しており、それ以降は政府主導での就活ルールが掲示されています。ただし、経団連が発表していた頃と、同様のルールが踏襲されています。

就活ルールは企業に対して発表されますが、たとえ選考解禁日などを守らなかったとしても、罰則はありません。ただ、現実的には多くの大企業が就活ルールに沿った採用スケジュールを展開することから、それを踏まえて自社の採用計画を立てることがポイントです。

また、市場の把握には人材会社などが発表する調査が役立ちます。各社の採用活動の傾向を把握することで、スケジュールの立案や採用手法選定の参考になります。学生の動機や入社の決め手を理解し、自社の採用のアピールポイントにつなげます。

採用方針の決定

採用は企業にとって、目的でなく手段です。採用方針として活動全般の基本方針を定めることが、中長期的に戦略的採用を遂行するためのポイントとなります。採用方針を決定する際は、過去の採用活動を振り返り、課題を抽出。要員調査などで現状の組織の状態を把握するとともに、事業計画や経営計画をもとにして目指していく組織の在り方を明確にし、現在の組織とのギャップを明らかにします。今の状態と理想の状態のギャップを埋める手段の一つが、採用です。

過去の採用活動の振り返りでは、以下のポイントに注目します。

  • 採用実績:目標とする人数の達成率、ターゲット別の達成率
  • 採用活動スケジュール:各イベントや採用活動の内容を整理
  • 採用体制:スタッフ構成は十分であったかどうか
  • 採用経費:各費用を把握、効果を見る

また、採用方針を決める際は、以下の視点を盛り込みます。

  • 採用目標数:年間の目標数、月間の目標数
  • 採用ターゲット別の目標数:職種別、新卒・中途・アルバイトといった雇用形態別
  • 取り組みの方針:ターゲットにあわせて、どのような施策を展開するか
  • 活動全般に対する基本方針

年間スケジュールの決定

年間スケジュールには、過去の採用活動の振り返りからの改善点を盛り込みます。採用目標人数にあわせて、いつまでにどのようなアクションをとるのかを明確化。全体を俯瞰(ふかん)した年間スケジュールを作成すると、状況を共有しやすくなります。

求人広告の展開や説明会の実施など、具体的な活動は予算と人員を考えながら計画します。過密スケジュールでは無理が生じ、実現できなくなる可能性も高まります。理想だけではなく、現実的な視点をもってスケジュールを決定することが大事です。

採用基準の決定

ターゲット別の採用基準を決定します。採用基準では、求める要件や人物像のほか、職種別の採用であれば仕事内容を明確にします。また、望ましい経歴のイメージなども定めておくと、募集要項の作成や書類選考の際に活動しやすくなります。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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