ニート
[ニート]
英語のNEET(=Not in Education, Employment, or Training)の頭文字をとった造語。学校に通っておらず、働こうともせず、職業訓練も受けていない無業者のこと。1999年にイギリスの内閣府が作成した報告書によって知られるようになり、日本でも今、若い世代を中心に急増していると言われます。
ニートのケーススタディ
働く意欲が低下しているのではなく<br />働くために動き出すことができない
若者の就職問題といえば、フリーターや失業者の増加に注目が集まります。しかし、今それ以上に深刻化しているのが「ニート」の問題かもしれません。フリーターはアルバイトであれ何であれ働いていますし、失業者は仕事に就こうと具体的な行動をしています。ところがニートは、フリーターのように働いているわけでもなく、失業者のように職探しすらしていません。
景気にも雇用環境にも明るい兆しが見えてきたと伝えられますが、その陰で働くことも学ぶことも放棄したニートが急増しています。今年7月にルポライター・曲沼美恵さんとの共著『ニート――フリーターでもなく失業者でもなく』(幻冬舎)を上梓した東京大学社会科学研究所助教授の玄田有史さんは同書の中で「ニートは25歳未満に限ってみても、40万人は、いる」と指摘します。しかも、「1997年時点で、8万人程度にすぎなかった。それが2000年には17万人、2003年には40万人と、それぞれ倍増している。たった六年で五倍だ」というのです。
ニートが急増したのは、なぜか? 背景には、90年代後半から厳しくなった若者の就職環境や個性・自己実現の重視を進めてきた教育改革の弊害、家庭環境の変化などがあるだろうと玄田さんは見ていますが、根本的な原因はわからない、としています。
ただ、ニートは働く意欲が低下しているかといえば決してそうではなく、「人付き合いなど会社生活をうまくやっていける自信がないから」という理由が多いそうです。仕事をつうじて他者と出会ったり、つながったりした経験がなく、それがために「働こう」と動き出すことができない。「働かない」というよりも「働けない」若者――それがニートの実像に近いでしょう。