配活
[ハイカツ]
就職活動で内定を得た学生がそこで活動を終了せず、入社後希望通りに配属(職種や部署、勤務地など)されるよう企業研究を続けたり、さまざまな機会をとらえて内定先にアプローチしたりすることを配属活動、略して「配活」と呼びます。若者の労働観、就労観を反映した新しい動きとして注目されています。
配活のケーススタディ
ミスマッチを怖れ、根回しやアピール
就活後ろ倒しの弊害を補うメリットも
長く厳しい就職戦線を勝ち抜いて、念願の内定を手にした後も、残り少ない学生生活を謳歌(おうか)するどころか、就活に続き「配活」に奔走する学生が増えています。ありとあらゆるツテをたどって希望する配属先の先輩社員に接触し、自分を売り込む学生もいれば、やりたい仕事に関する知識を深めて、内定後のフォロー面談や懇親会、入社前研修などでアピールしたり、提出する課題にさりげなく希望を書きこんだりと根回しや地ならしの方法はさまざま。なかにはフェイスブックで先輩を見つけ、“友達申請”を送って配属に関する情報を集めようとする学生もいるといいます。
多くの企業は採用段階で、学生に「希望する部署に配属されなかった場合はどうしますか?」と確認をとっているでしょう。そうした質問に対して個人の希望は希望として持ちながらも、組織の方針に従う意思をはっきりと表明できる学生でなければ、内定を得ることは難しいでしょう。
にもかかわらず学生たちが就活後の「配活」に駆り立てられるのは、なぜなのでしょうか。人材コンサルタントの常見陽平さんは、昨今よくいわれる「ミスマッチ」という言葉に学生が過剰反応し、何が何でも自己実現しなければならないという一種の強迫観念にとらわれているからではないか、と分析します(「AERA」 2013年7月22日号)。最近は、いわゆるブラック企業の問題をうけて、入社前の理想と入社後の現実とのギャップに強い警戒心を抱く学生も少なくありません。内定者の「配活」には、自分の希望をかなえるというだけでなく、いやな部署やつらい職場への配属を避けたい――安定したキャリアライフを踏み出すための自己防衛という側面もありそうです。
もちろん企業側からすれば、配属を本人の希望のみで決めることはありません。本人にいくら意欲や適性があっても、その部署にポストの空きがないこともありますし、会社によっては人材育成のため、あえて本人の希望とは異なる配属を行うケースも見られます。就職・転職情報サイト「マイナビ」が社会人を対象に、2013年2月に実施したアンケート調査によると、新卒新人として入社した後、最初の配属で希望の部署に入れたという人は約5割でした。
学生のねらいはどうであれ、彼らが内定段階から意欲を示し、入社後を見据えて組織や仕事への理解を深めようとする姿勢自体は歓迎こそすれ、敬遠すべきことではないでしょう。採用活動の後ろ倒しで応募から選考までの期間が短くなった分、学生本人の企業・業界研究が不足しやすく、企業と内定者のコミュニケーションも十分ではない現状を考えればなおさらです。実際、内定者からの「いろいろな部署の先輩社員を紹介して欲しい」という相談を受け付けている企業もあります。