教育産業を代表するベネッセホールディングスと
総合人材サービスのパーソルキャリア(株)※旧社名(株)インテリジェンスによる合弁企業「ベネッセ i-キャリア」が提供する新卒紹介サービス
プロローグ
(株)ベネッセ i-キャリアは、(株)ベネッセホールディングスとパーソルキャリア(株)※旧社名(株)インテリジェンスが2015年4月に設立した合弁会社だ。中途領域の転職支援に強いパーソルキャリアが2012年にスタートさせた新卒紹介サービスは、同社に事業承継されると同時に、その名称を「DODA」ブランドに改め、後発ながら急成長を遂げている。合弁会社設立の経緯、(株)ベネッセ i-キャリアが提供する新卒紹介サービスの強みについて詳しく聞いた。
“まなぶ”と“はたらく”をつなぐサービスの提供へ
---合弁会社設立の経緯を教えてください。
これは弊社のビジョンでもありますが、「日本の“まなぶ”と“はたらく”をつなげたい」という想いから会社を設立しました。
後にも触れますが、就職したい企業ランキングの上位は、時代を問わずB to C企業が名を連ねます。学生をミーハーだと定義してしまうのは簡単ですが、その理由を聞いてみると、そもそもB to B企業を全く知らないという事実につきあたります。つまり、「就活」自体が初めて本格的に社会に触れるキッカケであり、予行演習も予備知識もほぼない状態でいきなり本番を迎える学生がほとんどということです。パーソルキャリアでは、そのファーストキャリアの形成に課題を感じて新卒紹介サービスを展開してきましたが、この課題を本質的に解決するには、もっと前の時点、“はたらく”の前の“まなぶ”の時点で学生との接点を持たなければいけない、学生のキャリア選択に関する知識や可能性を広げるための支援をしなければいけない、という考えがありました。
今回、合弁会社設立という形で本格的な協業に至ったベネッセホールディングスは、“まなぶ”という領域においてサービスを提供し、誕生から大学2年生までと、高齢になってからの介護領域をカバーしている企業です。大学向け教育サービスでは日本でもトップクラスのサポート実績があり、例えば『Future Skills Project』という試みでは、企業について実践的に学びながら単位をとれる学内インターンシップを開発するなど、主に大学1、2年生向けのプログラムに強みをもっています。対してパーソルキャリアは、就職支援からその後の転職支援まで、“はたらく”領域でサービス提供を行ってきました。大学事業を通して大学や大学生とのつながりを持つ“ベネッセ”と、採用支援事業を通して企業とのつながりを持つ“パーソルキャリア”の知見を合わせ、大学3年生向けに“まなぶ”と“はたらく”をつなぐキャリア教育・キャリア形成支援サービスを提供しようという理念を掲げて、合弁会社を立ち上げました。
マーケットの追い風を受け、急成長しているDODA新卒紹介サービス
---DODA新卒紹介サービスが急成長している理由を教えてください。
弊社が新卒紹介サービスに本格参入したのは、2012年のことです。当時、新卒の採用手法といえば、マス型の求人情報サイトが主流で、企業と学生を個別につなぐ新卒紹介サービスを導入しようと考える企業は多いとは言えませんでした。しかし、この2年で新卒採用マーケットは大きく変わりしました。採用スケジュールの変更による影響で、中堅・中小企業の内定をもらってから選考解禁を遵守する大企業を受けて、大企業から内定がとれたら、先にもらっていた内定を辞退する学生がいる。そのため、内定辞退の発生を見越して、万が一の時には新卒紹介サービスを利用しよう、と考える企業が増えました。
また、この数年でマーケットが完全に売り手に転じたこともあり、大企業の採用予定数が増加し、必然的に中堅・中小企業の人材獲得は難しくなってきています。求人情報サイトだけでは採用人数を充足させられない、と考える企業からの相談が増えるのも必然と言えます。このような追い風を受け、DODA新卒紹介サービスは約4年で2,500社以上の法人からご契約をいただくまでに成長し、昨年は1,000名以上の就活生を社会に送り出すことができました。
---DODA新卒紹介サービスの特色について、お聞かせください。
他社との差別化ポイントとしては、パーソルキャリアが中途領域の人材紹介サービスで培った採用支援の実績とノウハウ、また、何年かかけてもまねをすることができない、ベネッセが持つ大学や学生との豊富なコネクションや信頼関係があると思います。
新卒採用(就職)と中途採用(転職)ではもちろん異なる特徴もありますが、基本的なサービスモデルは同じです。募集ポジションにマッチした人材を厳選してご紹介することで採用したい層に絞った母集団を形成する、他社の選考状況や候補者の意向を踏まえたアドバイスにより予期せぬ途中辞退を防ぐ、候補者の入社意向の醸成をサポートして内定承諾率を向上させる――。第三者の介在によるサポートの積み重ねが採用成功につながっていく点は、共通していると考えています。
---学生向けにはどのようなサポートを行っているのでしょうか。
現在は、東京・大阪の2拠点で、対面キャリアカウンセリングを実施しています。新卒専任のキャリアアドバイザーが多様な角度から学生との対話を重ね、一人ひとりの志向性や強みを把握し、入社後のキャリアについて一緒に考えます。
ところで、学生が選ぶ“就職人気企業ランキング”と社会人が選ぶ“転職人気企業ランキング”の顔ぶれが異なることはご存じでしょうか? これは就業経験によって価値観が変化するからだと考えられます。文系学生の多くは、イメージ先行型の就職活動に流されて一般認知度の高いB to C企業への応募に執着する傾向があります。そのため、第一志望群としてエントリーしていた有名・人気企業の選考に落ちると、次に受ける企業を探すことすらできなくなってしまうこともあります。中堅・中小企業や、B to B企業に関する知識が不足しているからです。優れた技術を持っている、あるいは成長力がある中堅・中小企業は数多くあります。こうした企業の事業内容や強み、魅力を第三者が説明することで、興味をもってもらえるきっかけにしてほしいと考えています。学生の視野を広げることをサポートするのも、キャリアアドバイザーの役割です。
また、弊社では面接で不合格になった理由を、学生の皆さんにお伝えするようにしています。限られた期間の中で就業先を見つけなければならない学生が、なぜ面接で落とされたのか分からないまま負のスパイラルに陥っているようでは、時間がもったいない。不合格の理由を知って対策を立てることができる点も、エージェントを利用するメリットの一つだと言えます。
“はたらく”をテーマに、より本質的な価値提供をする
---外国人留学生の採用支援にも力を入れているそうですね。
日本企業のグローバル化は加速しており、グローバル人材採用に関するニーズは大企業を中心に増加しています。弊社が2016年3月に開催した「ASEAN Job Fair」には、約50社の企業にご出展いただきました。DODA新卒紹介サービスのデータベースには、このイベントに参加したASEAN出身の留学生も登録しています。彼らは日本に留学にきている外国人留学生の中でも、10%しかいないと言われる希少な人材です。また、その半数以上が理系人材であり、企業から人気の高い機械、電気・電子、情報を専攻しているという特徴があります。日本人学生の理系離れが進む今、理系人材を採用したい日本企業にとっては非常に魅力的な存在です。一方、日本での就業を希望していても、ガラパゴス化した日本の就職活動のやり方が分からずに戸惑う外国人留学生は多いようで、卒業後に帰国を余儀なくされている方も大勢います。日本企業と外国人留学生のマッチングにおいて、新卒エージェントの果たすべき役割は大きいと考えています。
---今後は、どのような展開を予定しているのでしょうか。
転職市場では一定の認知を得ているエージェントサービスですが、民間企業への就職を希望する学生の中でエージェントサービスを利用している学生がどのくらいいるのかというと、現在はまだ5万人程度。全体の10%程度に過ぎません。私たちは、2020年には今の3倍である15万人に使われている状態を目指しています。
また、学生に対しては“面接に通過するための講座”のような瞬間的な価値だけではなく、“はたらく”をテーマに、より本質的な価値提供をしていきたいと考えています。例えば、社会に出て働くことや仕事そのものに関するリアルな知識を伝えるだけで、選択肢の種類や幅が増える。たったそれだけのことで、日本の就活生や新卒社員のレベルは格段に上がると思いますし、そこに対峙する面接官の気構えも変わってくると思います。就職活動のゴールは、志望企業から内定をもらうことではなく、入社後ビジネスパーソンとして活躍すること。我々はキャリア教育を通して学生に成長の場を提供し、社会で活躍できる本質的な力を身につける機会を提供していきたい。そうすることで、まだまだ学歴による選考に偏りがちな現在の新卒採用市場を変え、多くの学生にチャンスが巡ってくる時代をつくりたいと考えています。
---「日本の“まなぶ”と“はたらく”をつなげたい」という想いの元、急成長されている御社のサービスについてよく理解ができました。ありがとうございました。
企業データ
社名 | 株式会社ベネッセ i-キャリア |
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本社所在地 | 〒163-0411 新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビルディング32階 |
事業内容 |
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設立 | 2015年4月1日 |
代表者名 | 乾 史憲 |